必死に自分の想いを

副題に「心の涸れた大人のために」とある。

帯には〝行き詰まってしまった人、日々、つらさを感じている人へ。〟ともある。
ノンフィクション作家の柳田邦男氏がハウツー本などを書く筈はないので目次を見れば十章からなる本書はドン詰まりを迎えた人の再生の話だと分る。

最初はフランスの編集者、ジャン・ドミニク・ボービー氏は脳出血に襲われて倒れる。
昏睡状態の末、医師の下した診断は「植物人間になるでしょう」と云うこと。
然し、彼の脳はハッキリとしていたのだ。
だから必死に自分の想いを医師や家族たちに伝えようとするが、全身が動かず医師は伝えられないもどかしさの中で瞬きで伝えることに成功し、本を著わす。
だがその後、彼は亡くなってしまう。

と云う話から子供の感性を大人の章からは日本の話が主体になって来る。
特有の説得力ある文章であっと言う間に読み終えたが、「人生やり直し」などと云うような感じの本ではない。
これから社会復帰しようとする自分には何かの指針になるかと言う期待もあったが、各章で繰り返し語られるのは人間の持つ本来の感性。
そして、多くの大人はその感性を何処かに置いてしまって成長する。
三島由紀夫のように自分が生まれいづる瞬間を記憶している人も世の中にはいるらしい。
自分のことを考えても一番幼時の記憶は幼稚園の記憶だと思う。
それが普通で育って来るものだろう。